バセドウ病とは?
首の前方、喉ぼとけのすぐ下にある甲状腺からは、新陳代謝をコントロールしたり、身体の成長を促進する「甲状腺ホルモン」が分泌されています。
バセドウ病は、この甲状腺ホルモンの分泌が過剰になり、心身にわたるさまざまな症状をきたします(甲状腺機能亢進症)。
男性よりも、女性に多い病気です。
バセドウ病の原因
バセドウ病は、本来であれば身体を守ってくれるはずの“免疫”が、臓器や細胞を攻撃する、自己免疫疾患の1つです。
甲状腺ホルモンの分泌を促す物質に似た特殊な抗体が、甲状腺を刺激し続けることで、その分泌が過剰になるものと考えられます。
バセドウ病の症状
- 甲状腺の腫れ
- 頻脈
- 眼球突出
- 疲れやすい、だるい
- 多汗、暑がり、口の乾き
- 手足の震え
- 食欲旺盛
- イライラ
- 息切れ
- 脱毛
甲状腺の腫れ、頻脈、眼球突出がバセドウ病の代表的な症状と言われていますが、必ずしも現れるものではありません。
バセドウ病の検査
診察による症状の確認の後、血液検査、必要に応じてアイソトープ検査を実施し、診断します。
また、甲状腺の他の病気の有無を確認するための超音波検査、甲状腺ホルモンの過剰分泌による心臓への負担を確認するための胸部レントゲン検査・心電図検査を行うこともあります。
アイソトープ検査とは
放射性ヨウ素やテクネシウムを含む薬の静脈注射あるいはカプセルの服用の上、甲状腺の状態をガンマカメラで撮影し画像化する検査です。放射性ヨウ素やテクネシウムには甲状腺に集まりやすい性質があり、このことを利用します。
アイソトープ検査は、血液検査の結果でTRAbの値が正常~軽度高値等を示す場合、診断の確定のために必要になります。
バセドウ病の治療
バセドウ病の治療は、以下のように大きく3つに分けることができます。
薬物療法
通常、まず行うのが薬物療法です。
甲状腺ホルモンの合成を抑制するお薬を服用します。甲状腺ホルモンの分泌量が正常化する(1~3か月ほどかかります)と、症状が軽減します。ただその後も、短くとも2年、長ければそれ以上の期間、服用を続ける必要があります。
状態に応じてお薬の量を調整するため、定期的に甲状腺ホルモン値を測定することが大切になります。
アイソトープ治療
薬物療法で十分な効果が得られない、薬物療法による副作用が強く現れる、手術後に再発した場合などに適応となるのが、アイソトープ治療です。
放射性ヨウ素のカプセルを1回内服するだけの治療です。放射性ヨウ素には甲状腺に集まる性質があります。放射線が作用して甲状腺細胞を減少させることで、甲状腺ホルモンの分泌量をコントロールします。
うまくコントロールできれば、その後は定期的な検査だけで済むようになります。一方で、将来的に甲状腺機能低下症に陥り、甲状腺ホルモン薬の内服が必要になることもあります。
また、放射線の作用を活用する治療ではありますが、がんの発症の原因になることはないということが統計的に証明されています。
手術
甲状腺ホルモンを分泌する甲状腺の組織を一部切除する方法です(全摘出を行うこともあります)。甲状腺の腫れがひどい、薬物療法で十分な効果が得られない、薬物療法による副作用が強く現れる場合などに適応となります。
手術後、80%以上の症例において、内服などの治療の継続は不要となります。治療の確実性、症状が軽減できるまでの期間の短さが大きなメリットです。
近年では、ほとんど傷痕を残さずに手術を終えることのできるケースも増えています。